シェアリング エコノミー (sharing economy) Uber, Airbnbが変えた世界

Uber, Airbnb, Kickstarterなどで話題のシェアリングエコノミーについて、経済の概念と具体事例がバランスよくまとまった良書です。

 

・シェアする、あるいは共有するといった性格を持つ取引である。
P2Pあるいは個人間のモノなどのやりとりである。
・取引はインターネット上のプラットフォームで行われる。
ソーシャルメディアによる信用をもとにして成り立っている。
 
これが、
・インターネットの普及
スマホの登場
・決済システムの進化
が取引を可能にし、
 
・都市部への人口集中
・環境問題と資源の有効活用
フリーランスという生き方(オバマ大統領の皆保険制度導入も大きい)
 
という社会現象が後押しした、とクリアにまとめられています。
 
すでに車を保有している、東京に住むフルタイムで働くサラリーマンとしては、
東京ではUberがどこまで普及するか、わからないし、家族がいるので、カーシェアリングは現実的ではない、気がしますが、
Airbnbで旅の仕方が変わり、クラウドファンディングで共感できるプロジェクトへのサポートや、自分でプロジェクトを立ち上げるといったことは
すぐにでもシェアリングエコノミーがもたらす、新しい仕組みが生き方、暮らしを変えると思いました。
また、個人と個人がつながるということは、インターネットで情報で繋がり、スマホで繋がりにmobilityや即時性が発展し、決済システムの進化でさまざまな形態の取引が可能になる(サービス提供から投資まで)。
大統領選挙を見ても、既存の大組織から個人へのパワーシフトを感じるし、人間、自分のやり方次第で様々な生き方や夢の実現が容易になる可能性を秘めていること自体、社会の進化だなと。
 
新しい経済活動なので、規制面では各自治体により、対処方法がまちまちであることなど、現実的な課題も具体的に表記しつつ、シェアリングエコノミーがもたらすインパクトをしっかり伝えているトーンが好感を持てました。
 

日本は世界5位の農業大国

2010年に書かれた本ですが、農水省の利益のために、日本と韓国しか採用していない「カロリーベース自給率」、それは分母に廃棄されている食糧も含まれていたり、輸出額は減っていたりして「自給」の実態とはあわず、日本の農業に危機感を植え付けるための策略で指標として採用され続けている。
生産額ベースであれば、自給率は68%あり、生産額の規模は日本は世界5位の農業大国であるとのこと。この本はお恥ずかしながら、つい最近まで知らなかったが、TPPの是非論や、日本の農業を輸出する機運が高まるなど、この5年間ほどで、なんにとなく論調に多様性がでてきている気がします。これこそが専門領域を持つジャーナリストが執筆する本のお手本の一つでしょう。公表されていない生産額ベースの食糧自給率を他国との比較したところがFactとしては大きく、米、バター、豚など、具体的な事象において農水省の謀略の全体像も納得感があります。この本の続編はいまのタイミングで読みたいのと、著者が遺伝子組み換えの話や日本の農薬の問題などをどのように考えているか、知りたい気がしました。食の安全も、様々な意見があり、素人では判断が付きにくい状況であり、ジャーナリストの視点が必要です。

世界でいちばん大切にしたい会社

アメリカで成功している(日本ではなかなか成功者が現れない業態ですが)、オーガニック中心のスーパーマーケットの創業者とconscious capitalismの提唱する教授との協業による、経営書。利益のみならず、顧客、取引先、従業員、地域社会との共生をする経営の在り方を説きます。
しごく全うであり、近江商人の三方よしではないが、昔からある考えを、現代の複雑かつ高度資本主義においても、しっかりやってこうということか。パタゴニアは、地球環境の意識や従業員へのケア、顧客が熱烈なファンであることは、ホールフーズにかなり近いですが、確かに、圧倒的なスケールメリットでビジネスを拡大させるWalmartCostcoIKEAなどもsustainabilityという点ではそうかもしれないが、取引先とのフェアな関係まで含めると、ちょっと拡大解釈なのかもしれない気もしました。とにもかくにも、アメリカに行くと必ず寄りたくなるWhole foods。日本では残念ながらそのポジショニングがない、オーガニックスーパーの経営戦略がこのような発想に基づいていること、そして創業者がカウンターカルチャーが原点にあること(それでいうと大地を守る会に近いが、日本だと宅配ビジネスまでが限界とう実態)を知り、いろいろと腑に落本でした。

グローバリズムが世界を滅ぼす

グローバリズムこそが、経済危機、格差拡大、社会崩壊を生むと訴える学者たちの訴え。
京都大学が2013年に開いた国際シンポジウムでの内容が主。
グローバル化しても、豊かさが実感できない人が多く、2016年のアメリカの大統領選挙でのトランプ氏、サンダース氏の支持は、1%の富裕層への富の集中や、金融機関が世界を操る状況に対して、Noと叫ぶ人々が増えていることの一番の現れ。
この本の議論は、徐々に世界中に浸透してきているということだろうか。ベーシックインカムのような新しい社会制度を模索する国も出てきていたり、人々がグローバル経済活動にばかり目が行きがちだったのが、国がどうあるべきか、を考える必要がでてきたということだろう。なかなか対立軸を出しえない日本の政治がもどかしい。
新自由主義」に異議を唱える、海外と国内の学者たちの考えが1冊でコンパクトにまとまっているので、この手の話のとっかかりとしては良書だと思います。2016年現在でも十分に読む価値があります。

「本当のこと」を伝えない日本の新聞

ニューヨークタイムズ 東京支局長が日本の新聞を中心とした大手メディアについて痛烈な批判をしている。
記者クラブという日本特有の閉鎖的な機能により、本来は公的機関をチェックする機能であるメディアが、大手により寡占され、プレスリリース報道に終始する。
それが、3.11のような有事に傾向が強くなる。
新卒で大企業に入社した給料が高く、エリート意識が高い人ばかりで、日本には、ジャーナリストがいない、とのこと、ジャーナリスト魂があったとしても、組織構造的に難しいのだろう。
最後に日本の民主主義が試されていると訴える。確かに、読者のレベルがあってのジャーナリズムだろう。
「知る権利」という大切な権利が保障されるからこその民主主義。個人的には25年前に大学の専攻がジャーナリズムだったので、よく知る話だが、25年たって、さらに日本のメディアが経営的な困難さから、ジャーナリズム魂は擦り減っている気がする。ポータルサイトのニュースで芸能ニュースの比率は日本は他国より高いらしく、国民の感度も下がっている。「知る権利」の醸成から、「メディアの経営」まで絡む複雑な問題だが、メディアの問題はメディアが報じないので、人々に伝わらない類の話。日本のメディアはこんな状況だよ、と高校生卒業し、選挙権を手にする人たちに読んでほしいな。
 

ダイアローグ・マネジメント

コーチングの本である。コミュニケーションという領域は、人間が社会で生きる上で、毎日実践しているなかで、その活動の言語化・体系化については、なかなか積極的に触れる機会がなかったが、「対話」というコミュニケーションが、組織に与える意味合いが、腑に落ちる形で表現されており、「なるほど」と思わせる本である。あなたが、「話し手」として行動するとき、あなたは、相手を「一つの現実」と「一つの生き方」へと招待している
 
これからの組織は、それぞれの部品がフィクスされている「機械」から「水」のようになる。
多様性を受け入れ、「クリエイティビティ」、「イノベーション」が起こる組織を。
 
組織がもつ文化が、顕在化するのは、コミュニケーションである。この本の対話に関する考えは、もっともであり、自分が参加する組織は、そのようなものにしたい。ただ、イノベーションは必ずしもそれだけで生まれるわけではない、「風通しがいい組織」は気持ちがいいだけな感じがする。「対話」X「個の力」なのだろう。結論が当たり前だろ?というのが、コミュニケーション論や社会学などのふわっとした文系アカデミック。人間関係にセンシティブな人は、読んで共感するが、関心がない人は永遠に関心を持たない話でもある。
レビューでは、原本を読むような専門家のような方々?から、訳本として酷評があるようである。そんなに端折っているようなら、この1800円は高く、ちょっぴり残念です。

 

ベーシック・インカム入門

ベーシック・インカム」のコンセプトを初めて聞いたとき、その斬新さに驚いたとともに、強い関心を持った。この本は2009年と7年も前に執筆されているし、本を読むと、その議論の歴史はヨーロッパにて長く、18世紀末のトマス・ペインの『人間の権利』、『土地配分の正義』に遡るとのこと。確かに、社会や経済のあり方としては、そもそもありな考えである。
生きるために必要なお金を、「無条件」かつ「個人」という形で給付し、働かなくとも最低限生きることができる権利をすべての国民が有する制度である。スイスフィンランドで導入にむけた国民投票の機運が高まっている。いわゆる福祉国家とよばれる国々において、21世紀になり変化が激しい経済環境を見たとき、労働市場のあり方含めて、次のかたちを模索していると思われる。
日本でも、導入できたら、複雑な社会保障制度がなくなることは、結果的に強烈な行政業務の簡素化を実現するし、日本人ならではの「生活保護」への躊躇(本の中では侮辱感(スティグマ)が起因すると)がなくなり、企業経営者も、必要以上(他国と比べて)正社員の雇用維持を堅持することにがなくなり、つまりはリストラを安心して行えることにより、結果的に正規・非正規の格差もなくなる。
なによりも、現在決定的に日本社会が直面する、子育ての不安がなくなることは大きいだろう。安心して、結婚・出産・子育てができる安心感は結果的に日本経済の成長に寄与すると思う。
それとともに、いつまでたっても、寄らば大樹(国家公務員が「安定」が理由で人気の職種である悲しさ)の国民性が、一人ひとりが本当の意味で自立するようになるのも、大きいと思う。