読書感想文 「失敗の本質」

 

ビジネス界でも名著の誉れ高い本作を、遅ればせがら読んだ。
1984年の作品ということで、戦後、日本でも経営学や心理学等である程度体系化した第一人者たちの専門性を活用し、また戦後の高度経済成長を成功させた、「株式会社日本」と組織構造のオーバーラップをさせる考察により、21世紀においても示唆が多い作品です。
初版がでてから、32年間、バブル崩壊、経済のグローバル化による国際間競争の激化など、大きな変化の中では、グランドデザインを描けない経営者、情実人事等、やはり「日本人の組織の中での精神構造」は基本的には変わらず持ち続けているのだと思う。
バブル全盛期のこの時代のこのテーマで、将来への警鐘を唱えている先見性は、脱帽します。
突き抜けてグローバル経営をしている会社は、この失敗の本質、日本人のメンタリティの負の面を理解して、克服した組織を作っているのだろう。
一方で、外資系の会社においても日本法人という組織では、「綱領の聖典化」、「視野の矮小化」、「思考の硬直化」に導かれやすい、日本人特有の組織内の精神構造は垣間見れる、と個人的には体験している。
そんな現代へのオーバーラップよりも、胸を刺すのは、戦争をする意思決定、ばらばらな陸・海軍司令官の戦略、各現地の戦場における戦術、どのレベルにおいても、「人命を大切にする」というヒューマニズムと、対立した意見について責任者がクリアに方針をだせる組織、意思決定のための情報収集の重要性など、今の時代には当たり前だと思われることがなされず、本当に多くの無駄な犠牲者を出してしまう、人間、それが集まる組織というのは恐ろしいということだ。