ベーシック・インカム入門

ベーシック・インカム」のコンセプトを初めて聞いたとき、その斬新さに驚いたとともに、強い関心を持った。この本は2009年と7年も前に執筆されているし、本を読むと、その議論の歴史はヨーロッパにて長く、18世紀末のトマス・ペインの『人間の権利』、『土地配分の正義』に遡るとのこと。確かに、社会や経済のあり方としては、そもそもありな考えである。
生きるために必要なお金を、「無条件」かつ「個人」という形で給付し、働かなくとも最低限生きることができる権利をすべての国民が有する制度である。スイスフィンランドで導入にむけた国民投票の機運が高まっている。いわゆる福祉国家とよばれる国々において、21世紀になり変化が激しい経済環境を見たとき、労働市場のあり方含めて、次のかたちを模索していると思われる。
日本でも、導入できたら、複雑な社会保障制度がなくなることは、結果的に強烈な行政業務の簡素化を実現するし、日本人ならではの「生活保護」への躊躇(本の中では侮辱感(スティグマ)が起因すると)がなくなり、企業経営者も、必要以上(他国と比べて)正社員の雇用維持を堅持することにがなくなり、つまりはリストラを安心して行えることにより、結果的に正規・非正規の格差もなくなる。
なによりも、現在決定的に日本社会が直面する、子育ての不安がなくなることは大きいだろう。安心して、結婚・出産・子育てができる安心感は結果的に日本経済の成長に寄与すると思う。
それとともに、いつまでたっても、寄らば大樹(国家公務員が「安定」が理由で人気の職種である悲しさ)の国民性が、一人ひとりが本当の意味で自立するようになるのも、大きいと思う。